【現場いろいろストーリー】2020.08-Bespoke

約20年、私はアパレルの世界で仕事をしていました。どっぷり洋服の世界に嵌りつつも、ライフスタイルを提案するレーベルに在籍し、主に北欧と日本のインテリアや民芸品に深く関わりました。その世界には、健康的な“用の美”、そして本物だけが持っている“ものの力”、また、それを生み出す職人の“手仕事”がありありと生きている世界でした。この辺の話は後々別のコラムで書いていこうと思いますが、、、なぜ、今この話をとりあげたのか。建築の世界とファッションの世界がとても似ている側面があると私自身感じたからです。ここで感じた“建築”とは、形の無いものや、“これ”といった一つの答えがない物を、ゼロから依頼主の為だけに作りあげられること。そこには、輪郭のないイメージを図面という形にしていく設計士や、それを実際に建物という形にしていく大工の技術、他にも様々な職種の方々の手が加わって出来上がるもの、といった所でしょうか。

まずBespokeという聞き慣れないwordが出てきましたが、ファッション界で使われる業界用語の一つ。BespokeはBe Spoken(話し合う)に由来し、顧客と職人がじっくり時間を掛けて話合い、完全注文でスーツや靴を作っていくこと。ひとりひとりの体格や体型に合わせて採寸し、型紙をおこすことから始まり、全ての工程のほとんどが職人の手作業で作られていく。自分が何を求めているかによって、理想の完成図(スーツ)はそれぞれに異なってきます。私も1着だけBespokeでスーツのセットアップを作ったことがありますが、設計士と施主の打ち合わせに参加する度に、当時のBespokeのことが思い出されます。自分の為だけにゼロから考え作られたもの・・・。

ここまで書けば、落ちは想像できますね。このBespokeスーツ、家作りとまさに同じです。私達のような設計事務所は、施主の理想の家をいかに具体的に表現できるか、じっくり対話を重ねて提案をしながら不安要素も引き出して、その人にとっての最大の最適、快適、理想、の完成図を作り上げていくことが最も重要であり、それが役割と使命ですね。だからこそ、Be Spoken(話し合う)を皆様とたくさん重ねて、一緒に家づくりをしていきたいと思っています!(m.t)