【構造見学会の見どころ】2022.4-伝統工芸の技

5月2日(月)・3日(火・祝)のゴールデンウィークに控えている「佐藤家の構造見学会」の見どころについてレポートしていきたいと思います。

先に種明かしをしてしまいますが、ズバリ!「金輪継」で組んだ長〜い棟木です。これ、必見です。

「金輪継」とは、同じ形の2つの材にT字型の目違いを付けて組み合わせ、栓を打ち込み固定する伝統的な継手のことです。

今回、よしむさんが製作を担当してくれましたが、まさに写真のようにT字型に刻んでいき、2本の材がガッチリと組み合うことで、1本物と変わらない強度を手に入れます。

伝統的な継手の中でも強固なものの一つで、あらゆる方向に強度を得ることができます。

そして組み上がった長い棟木がこちらです。(写真:左上から右端まで斜めに見えている横に走る部材)
「棟木」とは、屋根の一番高い位置にある母屋や桁と平行に取りつけられる家の重要な構造体。母屋と共に垂木を支え、屋根の荷重を屋根の頂上である小屋束から梁へと伝える重要な役目を果たすものです。

以前にも「佐藤家建て方」のコラムで掲載しましたが、この棟木の全長は8mありますので、プレカット(機械)での加工も運送もできない長さです。そこで、4.5mと3.5mの材を「金輪継」で継ぐことで、8mの1本物の棟木が完成しました。

そして、写真の中央箇所に見える飛び出した細い木材は、材と材を固定する「栓」です。これは上下で太さが異なり、細い部分から打ち込んでいき、太い部分に差し掛かってくると、ガッチガチに部材同士が固定されます。よしむさんとキム兄はこれを「へその緒」と呼んでいましたが、これが肝となります。

そして、余分な部分をカットされた「へその緒」はこの位置でしっかりと留まります。いい仕事をしているにも関わらず、室内から見た時には何事もない顔をして佇んでいますね。これで2本の材はもう動かずに固定されます。

そして、更によしむさんとキム兄は一手間かけていきますが、ここまで長い材を走らせるとどうしても重力的に中央が垂れてきてしまいます。よしむさんとキム兄曰く、「10mmくらいの垂れが想定できるので、15mm程度上にむくらせて全体がギュッと締まるイメージで組み上げた」、と言っていました。見た目には解りませんが、経験があるからこその技です。棟木が上に向かってアーチしているイメージですかね。

そして、ここまでして長い棟木を作ることになった経緯は、室内の空間デザインを優先したからです。構造建築士と協働して、何度も何度も打合せを繰り返しました。「構造見学会」ではこの伝統工芸を実際に見ていただける貴重な機会となります。皆様、ぜひお気軽にご参加ください。まだお申し込みも受け付けています。(m.t)