【現場いろいろストーリー】2022.6-よしむさん担当の現場in京都

前日に京都入りして、よしむさんご夫妻で営まれている一棟貸の宿「開化」に宿泊。この「開化」は大正時代に建てられた京町家を、よしむさんがリノベーションして造られたもので、京町家の趣はそのままに歴史を感じながらゆったりと過ごせる素敵な宿です。

さて、よしむさんが現在担当している京都の現場は2件。どちらも学生さんと一緒にリノベーションをしていて、若いエネルギーに触発されながら改修指揮をとっています。この日は学校前集合で、現役の建築学生のみんなと合流し現場に向かいます。

まず、最初に向かった現場は「北山杉の里・中川」という集落の一角。町の中心には清滝川が流れ、べんがら塗の民家や丸太乾燥庫の古い建築が山の斜面に立ち並ぶ100世帯ほどの小さな集落です。

これが「北山杉」。天に向かって真っ直ぐに育ち年輪は緻密で、皮をむいた木肌は非常に滑らかで独特の優美な色艶があります。干割れが起こらないように時間をかけて乾燥させ、皮を剥いた木肌を磨いて仕上げたものが「北山丸太」となります。

こうして北山杉の雄大な杉林を眺めながら、学生さんたちと清滝川沿いを歩きながら現場に向かいます。

そして、今年の3月にインターン生としてSPCに来てくれた工藤ちゃん(写真左)との再会の機会でもありました。

まず1件目の現場はH邸。

今日の作業はこの現場ではなかったので、H邸は見学のみとなりましたが、学生さんたちが熱心に今までの作業の進捗を説明してくれました。

そして次に向かった二件目の現場は、右京区にある「越畑」と「樒原」の二つの集落で構成された宕陰の棚田から歩いて3分くらいの場所のあります。

この界隈は日本の原風景が残るのどかな場所。今日のメインの現場 I邸にようやく到着です。

早速作業開始!

こちらは、屋根の解体を担当するチーム。さまざまな道具を使い身体で感じながら工夫して作業を進めていきます。

屋根の解体チームと並行して、屋根の下地補修も行います。

丸桁の中央部分、水ぐされ箇所の補修のやり方を学生さんがよしむさんに聞いています。

ノコギリを使って腐った部分を取り除き、

下地の仕上げは鉋で削り、ここに新しい材がこの後組まれていきます。

さて、こちらは母屋の外に造られている水まわり(風呂・トイレ)の補修チームの作業です。

積極的に質問をしている学生さんたちの眼差しはとてもキラキラしています。

材の段取りをするよしむさん。

キム兄もみんなと一緒に作業に参加です。佐藤家の現場以来のキム兄と工藤ちゃんのコンビ。なんだか息がピッタリ、シンクロしてます。

高さ調整のための小屋束づくり、墨をつけて刻んでいきます。

部材が全て揃ったので組み立ていきます。

追掛大栓継の継ぎ手は、片方の部材から束に落とし込み。

もう片方を合わせて2本の桁を継ぎ合わせていきます。

棟木が組み上がったところで、最後は垂木を取り付けて今日の作業は終了です。

最後はみんなで集合写真。今日一日、安全第一で無事に終われたことに感謝です。

今回、よしむさんと学生さんたちのこの取り組みを見ていてとても素敵な関係だな、と純粋に感じました。学生さんたちにとっては学びの場であり、実際に技術を覚えることができるとても大切な場所です。

でも、よしむさんは学生さんたちに対して、作業員のようにやってもらうだけではなく、“楽しいな”と思ってもらえるような経験を残してあげたいと言います。若い子たちに助けてもらって、そして、後世を担う若い子たちに技術をつないで残していきたいと。本当に今日の現場はみんながとても生き生きと、前のめりに学ぶ姿勢が感じられました。厳しさも大事だけど、優しさはもっと大事。私たちSPCもこんな現場づくりを目指していきたいと考えています。

また、ここまで大規模なリノベーショに関わることができ、感じたこともたくさんありました。新築というのは段取りができるけれど、リノベーションは想定外のことの連続で、壊して外してから考え、臨機応変に対応できる技術の引き出しがたくさん必要になります。よしむさん曰く、壊してしまうのは簡単だけど、古い建物は材一つとっても年数が作り上げたものだから、買うことができないものもある。そして、それに価値を見出してくれる人がいて、僕ら人の手が加えられ、建物も喜んでいる、と。

こんな話をしながら、1日を締め括ることができました。
よしむさん、学生のみんな、キム兄、ありがとうございました!(m.t)